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<第25章>悪魔憑き その2
とは言うものの、本人に手渡す勇気も無く
音成家のポストに入れようと、
二人の写真を持って
美穂子は病院の前まで行く。
病院の営業時間は終わったらしく、
すでに閉まっており
隣の音成家に明かりが灯っていた。
ポストの前まで行ったけれど、
勇気が出ずに
駅の方角へ引き返そうとしたその時
美穂子の前に、見覚えのある小柄な女性が現れる。
“あの人だ!”
そう思った美穂子は、
思わず彼女の前に立ちはだかった。
「音成、まゆこさんですね?」
怯えたように頷く彼女を見たら、
なんだか憎らしく思えてくる。
岡田にあんなに優しい目で見られて、
愛されているなんて、許せない。
間違った事をしているのは、
自分でも分かっているのに、止められなかった。
悪魔でも憑いているかのように、
美穂子は彼女に向かって、
白い封筒を差し出す。
「岡田君と別れてください。」
美穂子は音成まゆこをじっと見る。
「彼の子供を、妊娠しているんです。」
そして蒼白になった彼女の前から、
美穂子はゆっくりと、姿を消した。
人魚姫には、もう憧れない<前編>完
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