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けれど、これまでとは打って変わって、曇った表情で倫音は答えた。
「名前で呼ばないでください」
「え?」
「私は苗字の『アマサキ』の音が気に入っているので、そちらでお願いします」
「そう…」
「お先に失礼します」
珍しく強い口調の倫音だったが、気を取り直したように再び笑みを称えながら小さく会釈した。
扉を引こうと倫音がドアノブを掴みかけると同時に、勢いよく反対側から押されて開いた。
「……ざーす!」
語尾しか聞き取れない挨拶を口にしながら入ってきたのは、NAMIYAのスタッフトレーナーを着た背の高い男。至近距離で対面するが、見慣れない顔だった。
察したように、涼太が仲介に入った。
「2人は初めて会うよね。 夕方の繁忙期に時短バイトで入ってもらってる天崎さん。彼は、いつもは深夜0時から朝8時までの深夜勤の……」
「タカシでーす。ちーっす!」
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