1.はじめての労働

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「本当に良い声ですね。天崎さんも、声優志望とか?」 黙々とパッケージ加工業務に没頭していた秋光が、口を開いた。 ボソボソと涼太に対する愚痴を吐いていた声の主と同一人物とは思えない渋い声。 まるで洋画のイケメン主人公にアテレコするようなイケボぶりに、涼太は自身の口を塞いで、吹き出すのを必死で堪えた。 「声優志望ではないですが、毎日腹式呼吸で発声練習をしていました。演劇部だったので」 「演劇部? じゃあ、女優志望ですか?」 「声だけじゃなくて、顔も綺麗だもんねぇ、天崎さんは」 秋光に対する嫌味のつもりで言った涼太の言葉に、倫音は少し伏し目がちになりながら答えた。 「私は裏方です。照明とか、衣装とか、演出とか。もう引退しましたけど」 「へぇ、そんな美人なのに裏方なんて、宝の持ち腐れ……」 DVDを山のように積んで抱えた客がカウンターに近づいて来たので、話は途切れた。
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