<第25章>上野さんの思い

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<第25章>上野さんの思い

翌日気持ちの落ち着いた美穂子は、 上野さんにラインで入院の件を伝えると 彼女は取るものもとりあえず、飛んできた。 「村上さん!何か困ってる事はない? 着替えとか洗濯とか、するで!」 そう言って、彼女の私服を持ってきてくれる。 かなり助かった。 「ご両親に、連絡は?」 「まだやわ。」 すっかり忘れていた。 落ち着いてからでもいいか、と思っていたら また上野さんに叱られた。 「そんな事、親に言わんでどうするの? 逆に心配かけるやろ? 分かった、うちから言っておくから 村上さんはしっかり身体を休めとくんやで。」 黙って頷く。 美穂子はその後、昨日岡田からもらったお菓子を 上野さんと分けながら 自分のした事を告白した。 「またそんな事してからっ!」 叱られた後で、ぎゅっと抱きしめられる。 「・・・村上さん、良く生きててくれたな。」 「え?」 良く見ると、上野さんは泣いていた。 身体が、震えている。 「うちがいらん事、岡田君と消えたら?なんて けしかけんかったら良かったって、ずっと後悔しててん。 村上さんを、こんなに苦しめてしもうて どないしようって。」 そう言われ、美穂子の目からも涙が落ちた。 「お腹の赤ちゃんにはかわいそうな事をしたけど、 村上さんがこうして無事でいてくれて、 本当に良かった。 絶対、“死にたい”なんて言わんといてや。」 抱きしめられる腕の力が、ぐっと強くなる。 美穂子は嬉しくて仕方なかった。 二人はそのままワンワン言いながら、 病室で涙を流した。
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