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<第2章>寝取られ亭主
祥子の相手は、同じ職場の研修医で
15歳ほど年下だった。
仕事を教えている間に、懐かれたらしい。
が、彼はそれだけでは飽き足らず、
祥子が結婚しているのを知っておきながら、
彼女をモノにしたのだ。
“怒るところなんだろうな、ここは。”
平井はなんだか他人事のように、思う。
祥子は確かに40代とは思えない美しさだし、
親切にされたら、好きになりそうだった。
だけどもう、平井と祥子の間には兄妹のような
感情しかなく、そこに注ぐ情熱は無かった。
研修医の彼は、
『子供が出来たんだし
旦那さんとは別れて、自分と結婚して欲しい』のだと
彼女に言って来たらしい。
二人で積み上げてきた生活は、10年にもなるのだ。
もちろん、それなりに愛しかったが
祥子とお腹の子供の幸せを考えると、
彼は別れる決意を固めた。
『君を好きじゃなかったわけじゃないよ。
感謝してる。だから別れるし、彼と幸せになってくれ。』
そんな事が、本心で言えるくらいには、
彼はお人よしだった。
“仕方の無い事、じゃないか。
人の心だもの。“
だけど、離婚を決めて
彼女と籍を抜いたその日から、
彼の心の一部は、欠けたままだった。
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