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<第1章>スピリチュアルハラスメント
会社に連絡した翌日、
直属の上司と海野が、見舞いに来た。
海野としては、本当は来たくなかったのだろうが、
美穂子の担当なので渋々といったところか。
もちろん上司には、『事故に遭った』とだけ、伝えている。
「ご迷惑をおかけしました。」
美穂子が言うと、
「命が一番大切だからね。村上さんが無事で良かったよ。」
と返された。
“命が一番大切だからね。”
その言葉が胸に刺さる。
そっと下腹部に目をやったあと、
顔を上げると海野と目が合った。
何も言わずじっと見つめると、視線を外される。
やっぱりこの程度の男だったんだなと、改めて思った。
上司からお見舞いのお菓子を渡された時、
平井先生が入ってくる。
回診の時間だったらしいが、
「お見舞いの方が来られてるなら、
また後で廻って来ますよ。」
と言われた。
「もう帰りますから!」
と、海野が慌てて言う。
一刻も早く、この場から立ち去りたいようだ。
ふうん。
と思いながら、
美穂子が海野を見つめて目を細めていると
先生は何か感じたようで
「あれ?」
と言った。
「どうしたんですか?」
美穂子が尋ねる。
「こちらのお若い方、肩が重くありませんか?」
視線は海野を見ている。
「へ?」
先生に見つめられ、海野が言った。
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