<第1章>スピリチュアルハラスメント

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「いやね、時々見えるんですけどね僕。 なんだろう、左肩のところにどす黒いモヤみたいな 下級霊が見えたもんで。 恨みが強そうだから、 すぐにお払いに行ったほうがいいですよ。」 無表情で、静かな声だった。 ちょっと、怖い顔だ。 「!?」 もう霊になって子供が取り付いたのかと、 美穂子は慌てて海野を見た。 彼はみるみる青くなる。 「霊、ですか?」 「なんだろう?水子みたいにも見えるんですけど・・・・。」 「いきなり何を言うんですか!失礼な。」 海野が声を裏返らせながら、叫ぶと 部屋を飛び出す。 上司がそれを、ぽかんとした顔で見ていた。 先生は彼の上司に 「スミマセンでした。」 と言った。 「時々ちょっと、見えてしまうことがあるんですよね。 あんなに動揺された方は、初めてですけど。 心当たり無いようでしたら 申し訳なかったとお伝えください。」 さっきとは打って変わって、穏やかな顔で言う。 上司は黙って病室を出た。 しばらくして先生は 「・・・当てちゃったか。」 と言いながら、美穂子を見た。 「先生、見えるの?」 「見えないよ、ヤマカン。あいつ、だったんでしょ?」 「・・・先生、勘が良すぎますよ?」 しばらく黙った後で、美穂子がそう言うと 二人は顔を見合わせて 一斉に吹き出した。
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