<第2章>スピリチュアルハラスメント その2

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<第2章>スピリチュアルハラスメント その2

平井が村上美穂子の病室に入ると、 会社の人間だろう年配の男と、 その部下らしい若い男が来ていた。 上司らしい男が話している間、 若い男はあさっての方向を見ているが、 時々村上のほうを見ては、 目が合うと視線を外していた。 “もしかして、彼女の相手はこいつか?” 平井はひらめく。 若い男のほうを見てから、 「あれ?」 と、さりげなく呟いた。 「どうしたんですか?」 そう聞かれたので、 男の左肩に悪霊が憑いていると言ってやると 彼の顔色が見る見る青くなった。 ビンゴだなと思う。 「何を言うんですか?」 と言ったその声が、明らかに動揺していた。 血の気の引いた男の顔を見て、 内心ほくそ笑む。 平井は続けざまに 「水子みたいにも見えるんですけど・・・・。」と言うと 「いきなり何を言うんですか、失礼な。」 そういって、彼は部屋を飛び出した。 「時々ちょっと見えてしまうんですけど、 あんなに動揺された方は初めて見ました。 心当たり無いんでしたら、 申し訳なかったですとお伝えください。」 平井がそう言うと、 その上司は黙って頭を下げ、病室を出る。 何かに気付いたような顔だった。 「・・・当てちゃったか。」 勝手な事をしたかな?と思いながら 平井は村上を横目で見て言った。 彼女は興味深そうに、平井を見る。 「先生、見えるの?」 「見えない、ヤマカン。あいつだったんでしょ?」 平井がそう尋ねると、彼女はくすりと笑った。。 そう言えば、 彼女が笑った顔を見るのは初めてだった。 魅力的だ。 「・・・先生、勘が良すぎですよ。」 そう言われ、彼女と顔を見合わせる。 二人はこらえきれずに、吹き出した。
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