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階下で玄関を開ける音がする。
「おばさんこんばんはー!」
入ってきた奴が誰だかすぐわかる。
さぁ、オペレーション1045-90開始だ。
どたどたと階段を駆け上がる音が近付いてくる。いい加減その歳になったら女らしさを身につけろ。
そう言ってやりたい所だが俺はオペレーション1045-90の真っ最中。
それすらも寛容に受け止めよう!
勢いよく引き戸が開く。
「いるー?!」
居るとも居るとも!俺はオペレーションの最中だ!部屋の中央で正座し、満面の笑みを浮かべて両手を差し出している!
「いたなこいつめ!」
居ましたとも居ましたとも!年に一度のこの日、母親が買ってくるこまっしゃくれた無駄に高級な奴よりも、ラッピングだけこけおどしの様に気合が入っていて中身はその辺の駄菓子屋で売っている安っぽいこいつのチョコの方がずっと美味いのだ!
「おりましてございます。」
オペレーション進行中の俺は満面の笑みでこたえる。
「あんた、今日うちの後輩に呼び出されたでしょ?」
「ん?よく知ってんな。」
「どういうつもりよ!」
仰る意味がわかりませんよお嬢さん。
「あの子どれだけ気合入れてこの日に挑んだかわかってんの?」
両腰に手を添えて前のめりになられた所で知る訳なかろう。
「や、なんか、本命っぽ…」
「本命に決まっているでしょ馬鹿っ!」
かぶせ気味に怒鳴られたってさ…。
「なんで断ったのよ!」
そりゃあの子は可愛かったけどもさ…。泣かれたのはすっごく困ったけどもさ…。
「付き合うつもりもないのにそんな心のこもった物、受け取れる訳ないだろ。」
するとこいつは怒ってんだか泣いてんだか喜んでんだか判断付かない様なおかしな顔を一瞬浮かべたけど真っ赤になって眉を吊り上げた。
「はぁ?せっかくあんたの為に一月も前から準備始めたのに無駄にされた気持ちわかるの?!」
何でこいつが怒ってんだよ。
「そんな真心のこもった物受け取っておいて付き合うつもりはありませんなんて言えるかよ!」
は!
いかんいかん!笑顔だ!笑顔でいなくては!
オペレー…
あいつは顔を伏せたまま俺の後ろに回った。
何だ何だ?
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