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東京から二時間ほど北へ、 私鉄の特急列車を走らせると たどり着く、田舎町・・・、 西でも東でも、もっと北でも 反対に南でも、何処にだって きっと同じ景色がある田舎町。 そこで育った僕の家は、その地域では 裕福な由緒ある醤油醸造業。 妹二人の長男の僕は  「大人になったら跡を継げ」 そう言われて育ってきたものの・・・ 刺激少ない田舎にも、 家業にもあまり魅力は感じてなくて 手伝いなんかするわけもなく 好きな絵はがりを描いていた。 小さい頃から「上手」と褒められ、 よく表彰もされたりしたし、 雑誌に投稿して注目もされた。 だから、将来は絵描き・・・ とはいかなくても デザインの仕事とかインテリア、 とにかく醤油や経営ではなく、 絵に関する方面への進学を ずっと子供の頃から希望していた。 しかし、十七歳の夏、  「絵は趣味でいいじゃないか」  「どうせ“食える”ような者   なんぞにはなれない」 祖父や父にキッパリと言われ、 東北あたりの農学部へ進学しろ、と 勝手に決めつけられ・・・ かといって、毅然と反論も 出来る気性でもなかった・・・。 そのくせ、 (嫌だ。家なんかに縛られて生きる  人生なんて・・・絶対に嫌だ!) 毎日鬱々と・・・・・。 高三になっても僕は 懸命に勉強のふりをして 隠れて絵ばかり描いていた。 受験まであと少し・・・ (受験に失敗すれば・・・  いや、だからといって  美大に行かせてくれるわけない) だから、なんとなく (今までの小遣いの貯金が  三十万ほど・・・他に・・・) 友人が欲しがってたギターを こっそり売ったり 受験用の参考書代を親に せびったりして・・・ 僕は ” 逃走計画 “ を 密かに模索していた・・・・・・・。         
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