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卒業式の翌日だった、
鞄一つで、東京へ出たのは。
東京が詳しいわけでもない僕は
とりあえず上野に着いて
安いホテルで・・・地図を広げて
仕事、家賃相場などの
本とともに二日間を過ごし
三日目には殆ど埼玉寄りの
東京と言うには華やかさの
微塵もない小さな駅に
目星をつけて・・・歩いた。
東西に小さな改札口の駅前は
東京では人出が少ない方だと
駅員さんが言ってたけれど
田舎町とは比べ物にはならない活気。
立呑屋など個人商店や
ファーストフード店がちらほら。
スーパーが二軒に・・・パチンコ店。
・・・パチンコ店、
- 従業員急募・寮完備
ホールスタッフ -
店の自転車置き場の貼り紙が
僕を呼び止めた。
「幾つなの?」
「マジメにやる?」
「明日から働ける?」
この3つでいきなり
給料・住居は確保、
(簡単なもんさ、稼ぐなんて)
幼い知恵を讃えていた。
この日、一緒入ったKくんは
「ミュージシャンでやって
いきたいんだ」
そういうだけのことはある
今で言うイケメン。
冴えないチェックのボタンダウンの
僕とは違い、Tシャツに革ジャンが
よく似合ってた。
六畳にトイレだけの寮で
僕らは隣同士に。
「デザイナーになりたいなら
渋谷のデザイン学校がいいよ」
そんなことも教えてくれた。
二人で生意気にビールで乾杯、
(簡単なもんさ、未来なんて)
・・・安直な日々の始まり。
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