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パチンコ屋の仕事は単調。 朝の清掃から始まって 長居の客などあしらいながら 片付けまでして閉店で 四日働いて三日は休み。 三日の休みは有り難いけど 四日の勤めの間は 有線放送で流れっぱなしの音楽、 玉が滑り弾ける金属音、 壁を瞬く間にヤニ色にする タバコの煙・・・・、それらに 八時から八時までビチリと染まる。 日に三回の休憩で表に出たら まずは深呼吸で、耳を休める。 Kくんはよく、公園で ドラムを叩く真似をしていた。 僕はそれを見ながら・・・ 見ながら何をしてたのだろう・・・。 初めての給料の半分は貯金。 残りで、流行りの服を買って Kくんの案内で渋谷や新宿へ。 田舎にはない刺激がたまらなかった。 田舎には「こうしなければ」 みたいなルールだらけ。 学生だから真面目な服、 夕方からは外出しないとか そんな暗黙ルールから 解き放たれた自由は 言いようもない快感。 年齢を誤魔化して酒場へ出入り、 浮かれて深夜まで遊興三昧。 「明日も休みなんだから  始発で帰ろうぜ」 Kくんに言われて 立ち寄ったのは夜通しの喫茶店。 同じように終電を逃した連中が コーヒー片手に眠気眼。 「奥の席へどうぞ」 ショートカットの似合う 小さな身体が中学生のような・・・ 笑うと目尻が垂れる ウエイトレスだった“ 桜 ” とは そこで知り合った。
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