教師っていう仕事

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「せんせーおはよ~」 「はい、おはよう」 「先生、今日もかっこいいですね!」 「はは、ありがとう」 俺は馬淵拓斗27歳。最初は戸惑った生徒の挨拶も教師生活5年目の今となっては段々と慣れてきた。今春には初めて受け持った生徒が卒業するし、私生活ではありがたいことに娘も生まれた。つまり公私ともに絶好調だ。 ・・・でもまあ、それは表面だけの話で・・・ 「せんせー、前の授業で分かんないとこあるから教えて~」 うちの生徒は真面目な子が多い。質問に来るような子もいるし、多少時間は取られるがいかにも『仕事してます!』って感じがして俺は好きだ。 「どれどれ・・・」 その子が聞きに来た質問は奈良時代の政治制度についてだった。 社会は暗記科目なんていうけど、意味を理解していないと覚えたって仕方がない。教えることによって興味を持ってもらい、出来るようになって社会科を好きになってほしい。そしてその成長を支えるのが俺ら教育者の仕事だろう。 「ああ、ここは二官八省っていうのがあって・・・」 「ちょっと、馬淵先生いいですか」 説明しようとした途端、俺は職員室の中にいた校長に遮られた。 「今は生徒に教えてるんで終わってからでいいですか?」 「ほお、私の呼び出しより大事なのは生徒優先ですか」 (当たり前だろ。それに今までずっと職員室にいたのに何でその時に声かけねえんだよ!) って言いたいけど我慢した俺は大人になったなあと感慨深くなる。 「ごめん間宮。先生ちょっと行かなきゃ行けないから教室かどっかで待っててくれるか?」 「ええ・・・じゃあいいや。うちも友達待たせてるから。じゃあね、先生」 「おい、分からないままだと・・・」 止めようとしたときにはもう姿は見えなかった。高校生の足とはどうしてこんなに早いのだろうか。 この調子だとあの生徒に次の授業アンケートで散々書かれそうだな。もしくは友達に言って俺の評判が落ちるか。ああ、もし親がモンペだったらもっとめんどくさいことになるな。どの道俺にプラスはない。 「すみませんねえ、邪魔したみたいで?」 (ほんとだよ!パワハラで訴えてやろうかこのタヌキジジイめ・・・) 心の声を押し殺し、笑顔で振り返った。 「いえ、ところでお話とは何でしょうか?」 教師になって学んだこと。目上のやつの言うことは優先で聞いて、とりあえず営業スマイル。
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