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自分の席に戻ると、俺を哀れんだのか隣の同僚の先生が温かいコーヒーを入れてきてくれた。
・・・俺はトイレに行きたいんだけど。
「ま、馬淵先生。そんなに落ち込まないでください。校長先生だって気が立っていただけでしょうし、一対一で怒られるのなんて5年目までですから」
「いや・・・それはいいんですけど。それに僕ももう5年目ですよ」
「あら!馬淵先生この間入ってきたばっかりみたいなのに!そりゃ私も老けるわよね」
「いやいや、森田先生はまだまだお若いですよ」
「そんな、高光先生はお上手ね。さすが国語科!」
あはは、と笑い声が広がる。あ、長くなるぞ。この会話。
「すみません、僕はちょっとお手洗いに・・・」
「あ、そういえば馬淵先生のスマホずっと着信入ってましたよ。愛しの奥さんからじゃないですか?」
「え!ほんとですか!?」
急いでスマホの電源を入れる。
「『今日のご飯は何がいい?あ、私にする?』とかじゃないの?」
「森田先生、それはさすがに古すぎますよー」
「あら、あなたさっき私のこと若いって言ったじゃない。嘘だったのね」
「・・・あ」
さっきとは一変して、険悪な空気が流れる。
でも、メールを見た瞬間そんなことはどうでもよくなった。
「・・・すみません、お先に失礼します」
「あら、急用だったの?」
「それになんか顔色も悪いですよ~」
俺はごくっと唾を飲み込んで、スマホを握りしめた。
「娘が・・・急に高熱が出て救急搬送されたって・・・」
「えっ!娘さんが!?」
予想外の俺の発言に先生たちが固まったが、俺は上着も着ずに帰り支度を始めた。
「そういうわけなんで・・・」
走り出そうとした瞬間、俺は太い森田先生の腕で遮られた。
「ちょっと待ちなさい!」
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