家族っていう存在

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「・・・これこそ風邪ひくんですけど」 「・・・」 もっともな妻の言葉に俺はうなずくしかなかった。 少し、妻と二人で話したくて、外に出たものの11月だということを忘れていた。 そしてもう日は暮れて夜だ。 「でも、そういえばたーくんと出会ったのもこんな日だったね」 「ああ」 和葉とは大学からの付き合いでかれこれ八年になる。学部は違うがサークルがきっかけで出会った。 「初デートがお寺をなんて私たちぐらいなんじゃない?」 「あれは世界遺産だ。外国人だってわざわざ来る」 「しかもたーくんったら仏像や遺跡を見たり、全部歴史に関することばっか。しかも意味の分かんない専門用語ばっかり言うし」 くすくすと和葉が思い出し笑いをした。 「あれは・・・俺なりに真剣に考えたんだよ」 過去の自分が恥ずかしくなってうつむく。 「分かってるよ。たーくん極度の歴史ヲタクだしね。だから今の仕事も夢中になれるんだよね。・・・私としてはちょっと寂しいけど」 とにかく、和葉ーおれの奥さんはかわいい。のろけとかじゃなくて本気で。 友達に言ったときは驚かれたっけ。そういうことに疎い俺は逆に学科の違う友達が和葉を知ってることに驚いたけど。 (・・・思い出した) そしてこの今の学校に採用されたとき、誓ったんだっけ。ずっとこいつを離さないって。 「たーくん。どうしたの?」 うつむいていた俺の顔を覗き込んできた和葉にそっと触れた。 「ごめん、ちょっとだけ・・・」 長くも短くもないキスを優しくした。 「ふふ、なんか新婚に戻ったみたいだね」 『公共の場で』などと怒られるかと思ったが、和葉は予想外の反応で、嬉しそうだった。 そういえばこういうことも最近はなかったっけ。子供が生まれてから妙に和葉が遠い気がして。なんだか女から母に変わっていく和葉から仕事を理由に避けていたのかもしれない。でもそれは俺の勘違いで何も変わっちゃいなかった。初めて出会った時からずっと、かわいい女の子だ。 「ー・・・和葉、ごめんな。そしてありがとう」 きょとん、と驚いた顔をしたがすぐにふっと笑みを浮かべた。 「どうしたのたーくん。今日変だよ(笑)あ、明日雪降るのかな~」
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