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前半
俺は、ようやく見つけた座れる場所に腰を降ろすと、スケッチブックを拡げた。
ようやく、である。
俺があのレストランに行ったのには、理由がある。
俺は絵を描くのが好きである。
目の前にある、自分の心が動いた物を描くことは快感以外の何物でもない。
しかし、ある時、絵を最後まで描き切る頻度が減っている事に気がついた。
飽きてしまう。
静物であれ、風景であれ、人物であれ、途中で、いや、最初から全く興味が湧かないのだ。そんな状態で描けば途中で筆が止まるのは当たり前だ。
一体どうした事か?
絵を描くこと自体に飽きてしまったのか?
いや、描きたい衝動はある。はち切れんばかりにあるのだ。
では、一体どうしてなのだろうか? 親族及び、友人連中に絵を描く者はいない。だから一人で生まれて初めて絵を描くことについて、考えてみる。
すると、あっさりと結論が出た。
心を動かされることが無くなってきている。
これは、どうしたことか?
俺は二十代の大学生である。成長につれ、見聞が広がった所為だろうか? それとも、本式で絵を学んでいないからだろうか? それとも――
悩んでいても仕方がない。
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