後半

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 振り返ってみるが、勿論レストランは無い。仄暗い暗黒の中めがけて、階段が延々と続いているだけだ。  あのレストランにいた人達はどうなったのだろうか?  あのレストラン自体はどうなったのだろうか?  ここはどこなのだろうか?  頭にさっと浮かんだ疑問は、どれも、それ以上考えても仕方がない物だった。  今は、まずは祝うべきなのだ。  この、魂を、心を、俺という人間を底の底から震わせて歓喜させている物の出現を祝うべきなのだ。  俺は、ようやく見つけた座れる場所に腰を降ろすと、スケッチブックを拡げた。  ようやく、である。  しかし、一枚目を描き上げるのは、急がなくてはならないかもしれない。  俺が描きたいのは、この『閉じている門』なのだ。  圧倒的に孤独で、だが、自分の使命を果たす事に全力を傾けている、この『閉じている門』なのだ。  『閉じている』物は、いずれは『開く』。開閉しない『門』など、どこにもない。  だから、急いで一枚目を描かなくてはならない。  それはきっと、俺の生涯最高の絵になるに違いない。  だから、開く前に  中から何かが飛び出してくる前に  俺は、素早く、そして喜びに震えながら、描き続けた。
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