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後半
「あなたの心には愛が無い」
俺の一人語りを聞き終えた占い師は、そう言った。
愛?
「そうです。人を愛し、物を愛し、そして自分を愛するんです。そうすれば世界には感動が溢れている、と気づくはずですよ」
煮詰まっていた俺は、大学の掲示板の張り紙を見て、この占い師の店に足を運んだのだ。
『お悩みを解決いたします』
そんな胡散臭い藁でも、すがってしまうくらいに俺は困り果てていた。
テーブルを挟んで向かい合っている、人のよさそうな中年の女性は、笑顔を全く崩さずにそう言ってのけたのだ。
「心に愛があるならば、道端に咲く一輪の花にも感動を覚えるのです」
中々に興味深い、考え方だ。
確かに感情で、物の見方は激変する。
占い師は俺の名前の画数を調べ、手相を調べ、生年月日を聞くと、首を傾げた。
ついで、カードをテーブルに円状に置くと、俺に一枚引かせた。
稲妻が塔を破壊しているカードだった。
「今のお話を聞く限り、あまりよくありません。どうも、あなたはこのまま進むと、とんでもなく酷い目にあう。もしかしたら命を落とすかもしれない。
……でも、それがお望みなんですよね?」
占い師は、やや皮肉めいた笑みを俺に向けた。
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