何度目の夏

3/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「……そっか。そりゃ綺麗だよ。なんたって私の妹なんだからね」 でも、結婚。したかったな。 今は叶わない願いに思いを馳せる。彼はどう思っているのだろうか。結婚しなかったことに後悔しているのだろうか。それとも――。 「見たかったなぁ、お前のウエディング」 「……そっか。私も、見せてあげたかったな」 彼の一言にほっとする自分がいた。 きっとこれは、良くないのだと思う。停滞を望み、変化を恐れる今の状況は。だって、もう進まなければならないのだから。私と彼は違う。交わる事のない明確な境界がある。 だから、彼は私を忘れなければならない。進むためには、私という未練を捨て去らなければならない。けど、そうなったとき。彼が私を想う気持ちに区切りを付けたとき。私はきっと、怨みの化け物になる。 「じゃあ、また来るよ。長居すればするほど、泣きそうになってくるし」 「……うん。またね」 彼が見えなくなるまで、私は墓の上から見送り続けた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!