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「……そっか。そりゃ綺麗だよ。なんたって私の妹なんだからね」
でも、結婚。したかったな。
今は叶わない願いに思いを馳せる。彼はどう思っているのだろうか。結婚しなかったことに後悔しているのだろうか。それとも――。
「見たかったなぁ、お前のウエディング」
「……そっか。私も、見せてあげたかったな」
彼の一言にほっとする自分がいた。
きっとこれは、良くないのだと思う。停滞を望み、変化を恐れる今の状況は。だって、もう進まなければならないのだから。私と彼は違う。交わる事のない明確な境界がある。
だから、彼は私を忘れなければならない。進むためには、私という未練を捨て去らなければならない。けど、そうなったとき。彼が私を想う気持ちに区切りを付けたとき。私はきっと、怨みの化け物になる。
「じゃあ、また来るよ。長居すればするほど、泣きそうになってくるし」
「……うん。またね」
彼が見えなくなるまで、私は墓の上から見送り続けた。
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