プロローグ

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とある目的でリュウに近づく。嗜虐心豊かな女性で、ところかまわず誰かに悪戯をする。         〇 エルスフィアの森に向かって四人の若者がグランレフ草原を歩んでいた。柔らかな風が吹くと、音のなかった草原に、草花の揺れる音が小さくせせらいだ。ディがウェーブのかかった桜色の長い髪を抑えて微笑む。                 「心地いいくらい静かね……」 グランレフ草原はエルトニア王国有数の大草原だ。水分をたっぷりと含みながらもマナの乏しい土壌のおかげで、子供の膝下に満たないほどの野草が一面に広がるこの大地は家畜の放牧にとても適している。 それゆえに畜産が盛んで街や村のそばだけでなく郊外にも畜産施設が点在しており、駅宿と併設しているものまである。平野部でありながら雄大な自然と牧場風景を一目見ようと、国外からも観光目的の旅人がやってくるほどだ。 「むしろ気持ち悪いですよ」 フレイは糸のようにしなやかな銀髪を横に揺らす。二人に挟まれるリュウは「あはは」と控えみに笑った。 王都へと続く街道からそれた道とはいえ、普段ならこの辺りにも家畜の鳴き声や往来する人々の喧騒が聴こえるはずだが、今日はそれらがまったくない。   原因は明確だった
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