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それもコンパスで引いたような、きれいな円状になっているのだ。木々は黒々としているもの、複雑なうねりを伴っているもの、淡く発光するもの、それぞれであったが、一様に言えるのは、どこかに必ず不気味さが内包されていた。
マナの強い森林に見受けられる現象だ。
「りぅぅ……」
だが、ゼロックはそのことを示していた訳ではないようだ。毛を逆立てなにかを威嚇している――背を丸めて森に尻を向けているのは言及するべきではないかもしれない――。
再び草原を一迅の風が駆ける。ディはゼロックを胸にしまった。
小さな地響きが起こり始めた。フレイは険しい表情で魔導書を開く。
木々の奥から土煙を上げて巨大な生物が猛然と向かってくる。
上半身は馬、下半身は牛、頭は鶏。荒唐無稽を体現しているかのような姿をしていた。
(なんだろう、こどもがプラスティックのフィギュアを分解して、つなぎ合わせて作りそうな見た目だな。さいきょうのどうぶつ。的な?)
人間の探求心――あるいはエゴ――の権化、改獣と呼ばれる生物だ。
改獣は瞬く間に接近してきた。
ディはあくまで涼し気に、その長細い腕で矢をつがえる。
あべこべなその生き物は走り方まであべこべで、キョウはなぜあそこまで速度を出せるのかが疑問でならなかった。
よくみると背にはその背徳的な造形に不釣合いな、美しい純白の翼が備わっている。しかし走るのに邪魔なのか、背にがっしりと格納されており全く機能していなかった。
(イミュテーション? ミューテーション? いやこの場合はどっちでもいいのかな)
「キョウ、来るぞ!」
「……うん!」
雑然とした模索を断つような兄の声に、一瞬意識をふわりとするキョウだったが、観測できるラグはほぼ見せずに、即座に杖を構える。
(それにどっちでも構わないし)
すでに改獣は目の前に来ていた。平屋の屋根をゆうに越える突進されたら一たまりもないだろうに、キョウはいまいち緊張感がなかった。
ディが番えた目を閉じ矢を放つ。同時に矢先に火が宿った。矢は朱い軌跡を描きながら今にも襲い掛かろうとする猛獣を掠める。ディは小さく息を突く。もちろん、意図して外したものだった。
たとえ高速の棒が炎を灯したところで、そんなものが効くような相手ではないのだ。いわば誘導弾である。
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