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「…。当たり前だろう?ここに人間なんかほとんどいない。ましてや戦闘員が人間なわけないだろ。」
「ふーん。じゃあなんなの?」
…何言ってんだこいつ?
「俺たちはAIだ。人間に作られた兵器だ。こんな事ここにいる人間なら誰だって知っているだろう。」
「知らないよ。だってここにくるのも初めてだし、あなたのことだって見るの初めてだし、外の空気を吸うのも初めてだもん。」
始めよりやや力のこもった声。初めて?
「どういうことだ?」
「私にもわからないよ。目が覚めたら知らないお姉さんが、あなたの名前はツェアだ。って言われただけで、あとは世話係の人に聞けって言われてそのまま連れていかれた場所にあなたがいたの。」
…。どういうことだ?
「つまり私は今自分の名前しか知らないの。だから教えて。わからないこと全て。」
意味がわからない。これが世話係なのか?そもそも世話係がなんなのかすらもわからないのだが…。
「ねぇ早く!」
ツェアは部屋の真ん中に置かれたソファに座り催促する。ふと目をつぶり頭のデータベースを見る。AIの俺たちは頭のデータベースと現実いちいち照合しなければ日常を過ごすことが難しくなることがある。もちろん戦闘中はそんなこと起きないが。
世話係…世話する人の言うことを聞いたり、教育を施す係のこと。
なるほど。
「わかった。君の疑問に答えよう。」
そう言って対面するソファに座る。いつもの宿舎の10倍はフカフカのソファだった。
「そもそも君は何がわからないんだ?それがわからないと教えるも何も…。」
「全部!私の名前以外全部!」
そう叫んだ彼女の目が妙に輝いていたのが気になった。
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