ただそれだけのこと。

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俺たち戦闘員にも給料は渡される。そして積極的に使うも者もいれば、全く使わない者もいる。俺は後者だ。食事も本部で支給される者で事足りているし、服だってある。これと行って欲しいものもない。 だからお金を下ろす、と言う行動自体初めてだ。購買部に向かう途中で何人かの戦闘員とすれ違ったが、誰もが腫れ物を扱うように俺を避けていく。 「ねぇ、なんでみんなあなたを避けるの?」 ツェアに聞かれた。本当に何も知らないのか…? 「簡単なことだよ。俺たちは戦闘員になる前、一つの同じ学校にいたんだ。そこでの成績によってこの本部での部署が変わる。俺は史上最年少で最高部署に配属されたんだ。他人からは、悪魔の子とか言われてるな。」 皮肉げに笑う。半ば自棄のような笑い。 「どうつもこいつも機械であることに変わりな… 「そんなことない!」 俺の言葉を遮ってツェアが叫ぶ。 「あなたは悪魔の子なんかじゃない!だって私が聞いたこと全部答えてくれる!ちゃんと優しい人間と同じ…」 ツェアが口を閉じる。その顔に浮かぶ表情はなんなのか、俺にはわからない。ツェアの目にはまたうっすら涙が浮かんでいる。 「ツェア?」 呼びかけるが返事はない。 「何かあったのか?」 急に聞こえた第三者の声。振り向けば司令官が立っていた。 「ツェアの叫び声が聞こえたが…。どうした?」 司令官が聞く。どうしたもこうしたも、俺にもわからない。 「大丈夫か、ツェア?」 司令官がツェアに問いかける。ツェアはじっと司令官を見て一言 「大丈夫…です。」 そう言った。本当に大丈夫なのだろうか。 「そうか。なら良かった。E5、くれぐれもツェアを頼むぞ。彼女は特別なんだ。」 司令官はそう言って去って行った。 彼女は、特別…?どういうことだ? 「ねぇ、」 またツェアが呼ぶ。 「ん。」 「今日やっぱり服買いに行くのやめる。」 「ふーん。え?」 「代わりにあの人を追いかける?」 「あの人って、司令官を?なんで?」 「あの人、私のことを知ってる。きっと私より知ってる。だからついて行って私のことを話してもらう。」 ツェアはそう言って、僕の手を引き司令官の後を追った。 司令官はよく会議に使われる部屋に入っていく。扉が後ろ手に閉められる瞬間に、ツェアがそっと足を差し込み、部屋の中を伺う。意外と気づかないものだ。中には司令官の他に後二人の人間がいた。 「ツァアシュトーレンはどんな様子だ。」
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