ただそれだけのこと。

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ツェアシュトーレン…?確か異国で破壊という意味だった。 「はい。順調かと。あと1時間以内で起動いたします。」 「よし。では我々は即時撤退を。この戦線も捨てる。なに、後ろにはまだまだ強力な部隊がある。要はあんなAI、捨て駒だ捨て駒。」 こだまする笑い声は、敵艦の兵士より醜かった。 起動?撤退?…すて、ごま…?どういう、ことだ…? グイッ! 腕を引かれて走り出す。目の前にはツェア。 「そのツェアシュトーレン?とかいうの探そ!それに聞けばいいんだよ!あの指令官とかいう人はここらが逃げる気なんだよ!あなたたちをおいて!」 ツェアが叫びながら走る。あんな短い会話だけでそんな判断はできない。今すぐ引き返して、司令官に聞くべきだ、と思う。だがなぜだかわからないが、きっと司令官は答えないと思った。なぜだかわからない。直感だ。 「早く!探さなきゃ!」 なぜツェアがそんなに必死なのかもわからない。でも彼女はきっとここから逃げることができるはずだ。特別なのだから。走る足を止める。 「どうしたの!早く…!」 「ツェアは司令官のところへ行け。」 無機質に告げる。機械越しに聞こえているようだ。 「え…?」 「そもそもあの話が本当なのかはわからないだろう。それにツェアシュトーレンとかいうのがどんなものかわからない。そんな状態で何をするんだ。もともと俺たちは捨て駒同然だ。今更足掻くつもりはない。仮に司令官がここを捨てるというなら、俺たちはそれに従うだけだ。」 「なんでみんな…そんな、こと…!」 ツェア泣きながら叫ぶ。その顔を直視することができず、さっと目をそらす。 ドサッ… 何かが倒れる音。 「ツェア!?」 目の前にはツェアが倒れていた。急いで走り寄りだきあげる。嫌な汗がじっとりと滲んでいる。どうしたのだろうか。何があった?攻撃を受けたのか!?なぜツェアが…? 「コード0001ツェアシュトーレン。起動準備に入ります。人間の皆様はお逃げください。これより30分以内に私は爆発します。」 無機質な声。ツェア…シュトーレン…? 「ツェア…?」 喉の奥から掠れた声が出る。 「はい。私はツェアシュトーレン。通称ツェア。」 目の前にいる少女が告げる。 「私はAI滅却専用装置です。」 滅却。 「私を爆破することで、半径十キロ以内の場所を爆破。主に戦線の基地を捨てる際、捨て駒となったAI破壊を役目とします。」
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