1人が本棚に入れています
本棚に追加
ツェアシュトーレン…?確か異国で破壊という意味だった。
「はい。順調かと。あと1時間以内で起動いたします。」
「よし。では我々は即時撤退を。この戦線も捨てる。なに、後ろにはまだまだ強力な部隊がある。要はあんなAI、捨て駒だ捨て駒。」
こだまする笑い声は、敵艦の兵士より醜かった。
起動?撤退?…すて、ごま…?どういう、ことだ…?
グイッ!
腕を引かれて走り出す。目の前にはツェア。
「そのツェアシュトーレン?とかいうの探そ!それに聞けばいいんだよ!あの指令官とかいう人はここらが逃げる気なんだよ!あなたたちをおいて!」
ツェアが叫びながら走る。あんな短い会話だけでそんな判断はできない。今すぐ引き返して、司令官に聞くべきだ、と思う。だがなぜだかわからないが、きっと司令官は答えないと思った。なぜだかわからない。直感だ。
「早く!探さなきゃ!」
なぜツェアがそんなに必死なのかもわからない。でも彼女はきっとここから逃げることができるはずだ。特別なのだから。走る足を止める。
「どうしたの!早く…!」
「ツェアは司令官のところへ行け。」
無機質に告げる。機械越しに聞こえているようだ。
「え…?」
「そもそもあの話が本当なのかはわからないだろう。それにツェアシュトーレンとかいうのがどんなものかわからない。そんな状態で何をするんだ。もともと俺たちは捨て駒同然だ。今更足掻くつもりはない。仮に司令官がここを捨てるというなら、俺たちはそれに従うだけだ。」
「なんでみんな…そんな、こと…!」
ツェア泣きながら叫ぶ。その顔を直視することができず、さっと目をそらす。
ドサッ…
何かが倒れる音。
「ツェア!?」
目の前にはツェアが倒れていた。急いで走り寄りだきあげる。嫌な汗がじっとりと滲んでいる。どうしたのだろうか。何があった?攻撃を受けたのか!?なぜツェアが…?
「コード0001ツェアシュトーレン。起動準備に入ります。人間の皆様はお逃げください。これより30分以内に私は爆発します。」
無機質な声。ツェア…シュトーレン…?
「ツェア…?」
喉の奥から掠れた声が出る。
「はい。私はツェアシュトーレン。通称ツェア。」
目の前にいる少女が告げる。
「私はAI滅却専用装置です。」
滅却。
「私を爆破することで、半径十キロ以内の場所を爆破。主に戦線の基地を捨てる際、捨て駒となったAI破壊を役目とします。」
最初のコメントを投稿しよう!