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私は災難に見舞われてしまいました……。
翼がとっても、お痛いです。チューン、チューンと唸ってしまいます。
私の不注意が悪いのです。
昨日の夜から、つい先程まで派手やかな踊り会で踊り仲間と幻惑的な水物を飲みながら、ドンチャン騒ぎをしていたのです。
幻惑的な水物は人間逹に気付かれないように少しづつ盗んできました。
私とっても、お可愛い顔なので異種族の鳥逹とも大変、仲が良いんですの。
ウエーイとか騒ぎながら心から楽しんでいるんです。
しかし幻惑的な水物は美味なのですが己を正常から遠ざけてしまいます。
つまり清らかな私でもクレイジーになってしまうのです。
空間認識能力が低下して木にぶつかってしまいました。それで現在に至ります。
「チューン、チューン」
ああ、お痛い、お痛い。これでは、とても飛べませんわ。飛んでるときの私は、どんな時の私よりも、お美しいのに……。
それが今は、ただ地に横たわって悲鳴をあげているだけ。
私の力だけじゃ、どうしようもありません。
「あっ。雀が倒れておる……」
頭上から声がしてきました。かすんでる……。穏やかな生命を持つもの、そんな感じがするのです。
視界に土がこびりついた淡黄色が映ります。私、包まれているようです。
「かわいそうに。翼を痛めておる……」
私は目を声がした方に向けます。
あ……。人間の、お爺様だったんですね。なんて優しい目をしたお方なのかしら……。
黒い目がウルウルとしています。この、お方は私のために、このような表情をさせて……。
なんだか心がジンジンしてきました。
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