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インターホンを鳴らす音がする。
「おばあちゃーん、こんにちはー!」
澪の声が聞こえた。元気で明るいその声を、小さく窘める生真面目な美紀の声も。
ああよかった、俺は佳代子の傍に寄り添った顔を上げる。子猫が、俺と佳代子を見守るように座っていた。何処となく、寂しそうに。
「にゃう」
「……みゃぁ」
後は頼む。そう伝えるように鳴けば、子猫はまるで、しょうがないな、というように答えて、部屋を出て行った。
その後ろ姿は、俺が初めて出会って咥えた小さな子猫ではなく、一回りも二回りも大きくなっている。甘えん坊なところはまだあるけれど、もう立派な大人の猫だ。
玄関へと二人を出迎えに行った子猫に連れられて、二人が来るのもすぐだろう。それを待たずに、俺は顔を佳代子の鼻先へとすり寄らせて丸くなった。
「にゃあ」
今度は一緒に逝くから。俺は静かに、佳代子の傍らで目を閉じた。
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