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静かな空間を切り裂くようなアラームの音で目を覚ましたとき、私は一瞬自分がどこにいるかわからなかった。見慣れない天井に、体に馴染まない布団。やたらとうるさく風が通り抜けるのを抑えるために胸に手を置く。風の音が静かになると、いま自分がどこにいるかにはすぐに思い当たった。ここはホテルだ。今はツアー中で、今日は朝早くから移動になるので、美鳥が空港近くのホテルを押さえたのだ。
あくまで仕事を全うしようとするアラームを止める。今からシャワーを浴びて荷物をまとめて部屋を出れば、美鳥が指定した朝食の時間には間に合うだろう。私は着ていた寝間着をベッドの上で適当に脱ぎ落としてユニットバスのドアを開けた。
ユニットバスはあまり好きではない。トイレにお湯が飛ばないようにカーテンを引くけれど、そうすると今度はカーテンが濡れる。そのために作られたものであるはずなのだが、濡れたシャワーカーテンの感触が私はあまり好きではなかった。
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