序章「終わる箱庭」

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序章「終わる箱庭」

中央都市は燃えていた。 紅蓮は創りあげた物を全て灰に変えて行くのである。火中、漆黒の鎧を纏った戦士が剣を構え、一人の男と対峙していた。漆黒の鎧は燃え盛る炎を吸い込むか如く、闇の色を輝かせている。その鎧に映り込む男の表情は笑っていた。微笑を浮かべる男の右手に持たれていたのは子供の首である。 「ノーマン、貴様がやっている事がどんな意味を持つのか分かっているのか?」 「分かっているさ、知識を喰らう私は、この世界に興味が無くなったのだよ。マシア」 漆黒の鎧を装備した戦士マシア、魔剣ルールブレイカーを構えた。過去に一度殺したノーマンに再び剣先を向けていた。 「どこまで知り得た、麒麟の知識、記憶はどれ程であった」 「あぁ、やはり貴様も気になるかマシア。これは凄く美味であった、私は詩人ではないが可憐な歌が唄える位には酔える。どんな絶世の美女を抱いた所でこの旨味には届かない、私はこの世界、いや」 「【外】を見たのか」 「おや、マシア。君もやはり訪問者だったのか?君の知識も気になるな」 「雑食の屍人か笑えない冗談だな」 「この外には快楽も浄土も存在する、私が身を置くべきは神の、【本当の神】の境地」 「狂ってるな、おい、ノーマン。この訪問者の襲来は分かっていたのか?」 「いいや、正直知らなかったよ。だけど、ゲンブの部下の小僧を喰らった時、この日が明確なモノだと確信した」 ノーマンはゆっくり麒麟の首を赤く燃える地面に丁寧に起き、表面を焼いていく。血肉の焦げる匂いが辺りを濁らせていく。 「ゲンブはこの時を知っていたのか」 「ゲンブ自体は知らなかったようだな、訪問者の襲来に備えて小僧が【カク】を保有したようだが麒麟に解体させられたのさ。【平和】の主張を理由に」
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