Sweet xxx……

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「あいつの好きな食べ物って何?」 あたしは、徹ちゃんこと長瀬徹哉(ながせ てつや)に尋ねた。 「"あいつ"って組長っすよね?  組長の好きな食いもんっすか。  そっすねー」 徹ちゃんは鳶色の瞳を伏せた。 そのまま数分。 あたしは、辛抱強く答えを待つ。 「うーん」 一声唸ると、目を開けた。 「組長の好きな食いもんは――――」 「食べ物は?」 「や、分かんないっす。  甘いもん以外なら、何でもOKじゃ  ないっすか?」 あたしは、ガックリと肩を落とす。 今まで待って、得られた情報は あたしでも知っている『甘い物が苦手』 だけだ。 なんて時間の無駄遣い…… 「ねぇ、榊さん。  あいつの好きなお酒って知ってる?」 あたしは、質問先を変えた。 真柴組の次期若頭と目される榊和磨(さかき かずま)さんは 書類の束を膝においた。 榊さんは真柴がまだ組を継ぐ前から 一緒にいた人だ。 きっとあいつの好みも熟知しているはず。 期待のこもった眼差しを向けると 榊さんは困ったように頭をかいた。 「すいません、お嬢さん。  組長は、何でもイケる口です。  日本酒から、ビール、ワイン……紹興酒も  飲んでたしな。特に何が好きってのは……」 はぁーっ。 あたしは盛大なため息を吐いた。 「何でもいいから、教えて!  あいつの好きなもの」 ふたりは顔を見合わせ、ニヤリと笑った。 あたしの方に向き直ると 「姐さんっす!」 「お嬢さんでしょ!」 同時に答えた―――――
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