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ほっと胸をなでおろすと同時に，不思議に思った．一度応答が消え，再度応答が現れるまでの空白期間が存在する．さらに調べて見ると，2018.8.20から2019.6.12まで約10ヶ月ほどが空白期間だった．自分はその期間，意識不明にでもなるのだろうか．キリのいい数字ならまだしも，10ヶ月というのが妙にリアルに感じられ，恐ろしくなった．
急いで画面を消し，コートを羽織り，自転車に跨って大学を出た．大学を出る途中，本来の目的であったPCのトラブルに関しては，一切作業が進んでいないことに今更ながら気づいたが，とても戻る気にはなれなかった．翌日大学事務室で例のPCに再びping 1992.2.13を入力したが，エラーが返ってくるだけだった．その後，しばらくはあの夜のことが忘れられなかったが，時間とともにほとんど意識に上らなくなっていった．
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2019年6月18日に，私は退院した．
先週生まれた娘（ああなんて甘美な響き）も一緒だ．
大学院時代の友人に出産の報告をした際，あの夜のことを思い出した．この10ヶ月，私の体には２つの命が共存していた．その期間は，ping応答がなかった空白期間と一致していた．あれは，一つのネットワークに同一IPアドレスを持つ装置があったことによる不通状態だったのではないか．今となっては確かめようもないが，私はそう思う．
夫に当時の話をするといつも，とても申し訳なさそうな顔をする．
「あの時はスマホが水没していて，応答できなかったんだ」と．
完
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