満月だけはあいつらの悪事を知っている

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しばらく走ると潮の匂いがして来た。 どうやら港の倉庫に着いたようだ。 乗用車のヘッドライトが消えたのを合図に、荷台から車体の下へ滑り込んだ。 しなやかに。確実に。 わたしがタイヤの陰に隠れたのと同時に、男たちが荷物を下ろしはじめた。 役割分担がしっかりしている。 なんて、手際の良さに感心している場合じゃない。 下ろす役、運ぶ役、整理する役。 さっきまで(うち)の物だったのに。 倉庫内に並べられた家具や家電。 処分先が違うのか分類され、シールを貼られている。 、、、子猫は? 、、、どこなの? 下手に動くと見つかるかも知れない。 あの男が倉庫内に見当たらない。 子猫が車から降ろされたのかまだ乗っているのかさえ、分からない。 わたしは、耳を澄ませた。 聞こえた、「助けて」って声が。 わたしは、声の方向へ瞳を凝らした。 見えた、袋を持った男が隅を歩いている。
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