満月だけはあいつらの悪事を知っている

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満月だけはあいつらの悪事を知っている

外に出ると、雨はすでに上がっていた。 アスファルトの(わだち)に残った水溜まりに、満月が映り込む。 幌付きのトラックには、運転手と子猫を奪った男が乗った。 月明かりに照らされた男の顔は、残忍そうだった。 他の連中は、乗用車に乗りこんでいた。 わたしは隙をみて、幌の中に潜り込んだ。 お気に入りだったわたしのソファーを見つけて下に隠れた。 ここなら、荷物に潰されることもないし、すぐに飛び出せそうだ。 わたしはスマホなんて持ってない。 こんなことになるなら、パパにスマホを買ってもらえば良かった。 近所の人には上手く伝えられないし、助けを呼びに行ってる間に逃げられたら困るわ。 目撃者はわたしだけ。 あいつらは家族の仇。 せめて、子猫だけは助けなくっちゃ。 だって弟よりちっちゃいんだよ。 あれこれ考えている間にトラックは出発した。 慣性の法則で体が揺れる。 幌の隙間から覗くと、仲間の乗用車が付いて来る。 男の運転はパパの運転と違って、荒っぽかった。 普通の女の子だったら車酔いしていただろう。 でも、わたしは特別な子だったから平気。
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