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「お前って昔から、パーティとかそういうの苦手だったもんな」
からかう様なその声に、私はふかふかのピローから顔をあげ、軽口を叩いた張本人を睨んで見せた。
「だから式なんてしたくないって言ったでしょ。しかもそのまま式場にしたホテルのスイートで一泊って。なんだか晒し者状態で恥ずかしいったらありゃしないわよ」
文句を言う私に、彼―――塚本 浩之(つかもと ひろゆき)はニヤリと笑ってベッドへと腰掛けた。
「新婚夫婦らしいだろ?歳は食っても初夜は初夜だからな」
「初夜って……」
生々しい響きに、つい頬が熱くなる。言葉は恥ずかしいけれど、私も浩之も互いに32歳という立派なアラサーだ。
今更初夜だのなんだの気にする必要もないし、柄でもない。だというのに、こう面と向かって言われてしまうとなんだかむず痒いものがある。
「式終えてすぐになんだけど……十年経ってもお互い独身だったら結婚しようなんていうの、まさか浩之が本気にしてるとは思わなかったわ」
今更ながら、今日に至る原因となった言葉を投げかける。
そんな私を見て、浩之がふっと瞳を細めて見せた。
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