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私と浩之は大学時代、よくある友人の紹介で知り合った仲、というヤツだった。
と言っても、互いに彼氏彼女が欲しくて紹介されたわけではなく、友人の彼氏がたまたま連れていたのが浩之だったという至極ありがちな出会いである。
その頃大学で活字愛好サークルなるものに所属していた私は(暗いと言うなかれ)サークルにこそ入っていないものの、同じく小説好きの浩之とは初対面から話が合った。
いつしか頻繁に二人で会うようになり、周囲からはデキているんだろうなんて噂されるほど二人でよく過ごしていた。実際は、私と浩之の間にそんな甘い空気が流れた事は一度も無かったのだけれど。
けれど、大学を卒業する間際、ふとした事からなぜお互い相手を作らないのかという話になった。
私は単に、自分が三人兄妹の末っ子で、女好きの上の兄二人を見ていた為男性に夢を持てないのと、元々人に束縛されたり都合を合わせたりするのが嫌いな性質である事を浩之に告げた。
聞けば、彼も同じ様なものらしかった。
誰かに邪魔されること無く、休みはゆっくり小説を読んで、自分の時間を過ごしたい。
そんな枯れた私の思考に、浩之は共感の言葉をくれた。
だから私は彼に言ったのだ。
「じゃあさ、もしかしたら私達、ずっと相手ができないかもしんないね。だって作ろうとしないんだし。もし、十年後もお互いに独身だったら結婚しちゃわない?恋愛とかそういうんじゃなくてさ。友達婚みたいな感じで。それなら周りにも言い訳つくでしょ?」
いくら独身貴族が増加していると言っても、いつの時代も責め立てられる言葉は同じ。
時期がくれば、結婚しろ結婚しろと、せっつかれるのが関の山だろう。
ならば友達婚だろうが何だろうが気の合う人間と籍を入れてしまえばいい。
若い年齢独特の極端な思考をしていた私は、ふざけ合いの延長みたいな気分で馬鹿な提案を浩之に聞かせてみせた。いつか忘れてしまうだろう軽い約束。何年か後、笑い話にでも出来るだろうくらいの気持ちだった。
けれど。
ほぼ冗談で言った言葉に、浩之は一瞬だけ目を見開いて、「そうするか」と短く呟いた。
それに私は何も考えずに「ありがと。」と軽すぎるほどの礼の言葉を述べたのだった。
―――十年前の私は夢にも思っていなかっただろう。
その言葉が、まさか本当になるなんて。
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