プロローグ

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私の意見を聞いたリコちゃんは、 「あのさ、そんなことで訊くと思う?」 なぜ、強い口調で返されなければならないのだ。 あんまり理不尽に言葉を返しそうになる。 だけど、切羽詰まったような焦りがリコちゃんの声に滲み出ていて、私は異様さを肌で感じた。 無闇に声を荒げてはならない。 ここは一度、落ち着く必要がある。 深呼吸してから引きつる笑顔で言葉を返した。 「ごめん、私、まだ読んでないの」 「そ。 だったら早く読んでよ」 「……は?」 いけない。 やはり沸々と沸き立ってしまうものがある。 私の情緒はまだ安定しきれてないと実感した。 苛立つ自分を押し殺して、リコちゃんに背を向けて黒板へ向かう。 貼られていたのはA4サイズの罫線入りの紙だった。 だけどそこには予定変更を示す内容は書かれていない。 あるのは、罫線をはみ出して書かれた怒りや恨みを込めたような筆圧の強い文字だ。 私はそれを黙読すると同時に、膝の力が抜けるかと思った。
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