とける、とける。

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 ***  何でこんなことになってしまったのか。  僕は呆然と、パトカーや救急車のサイレンに囲まれた校庭の一角を見ていた。  小森さんは尊敬できる人だった。爆憐グールの頭。喧嘩の英雄とさえ言われたほどの腕前。この人がいれば、この町全てを支配下に置くことも夢ではないと思っていたのに。  ここ最近、様子がおかしかった小森さん。  踊場で――一年の時からずっとツルんできた筈の俺を突き飛ばした時。あの人の眼はもう、現実なんて何一つ見えていないように見えた。ああ、やっぱりあの噂は本当だったんだと悟る。だから絶対ダメだと言ったのに。あのクスリにだけは手をだしたらヤバイと。ヤクザが裏で糸引いてる本物だとそう言ったのに――それでも好奇心が抑えきれなかったのだろうか。いつだって、新しいものや、ダメと言われるものほど挑戦したがるような人だったから。 ――最後にあんたは……何を見てたんすか。小森さん……。  屋上から、外れたフェンスと一緒に落ちたあの人の身体は。  四階建ての建物からとは考えられないほどに――ぐちゃぐちゃに、“溶けて”しまっていたらしい。
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