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逡巡し、なかなか返答することの出来ないアイリスを前に、使用人らしき女はまた僅かに首を傾げた後、少女の返答を待たずに言葉を溢す。
「御客様は、『魔王』という存在の打倒を目的として、此処へといらっしゃったのですね」
「えっ……」
考えを読まれた。そう確信し、図らずも思考を乱した彼女を前に、使用人は更に続ける。
「その『魔王』なる存在に、私めは全く心当たりが御座いませんが、しかし、我が主は博識でありますが故、その御方を存じているやも知れません。我が主に御相談されてみては如何でしょうか」
彼女の提案に、アイリスは少しだけ困惑するような表情を浮かべた後、無理矢理な笑みを作って答える。
「そうですね。その城主様に会ってみたいと思います」
「では、此方へ。我が主の許へ、御案内致します」
再び丁寧にお辞儀をして、使用人は徐に歩き始める。納めた剣の柄を掴んだままに、アイリスも彼女の後に続いて城の奥へと進んだ。
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