第一章

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   『ある日、世界は闇に閉ざされた……』。  物語の冒頭にでも綴られるような、そんな陳腐な言葉を、後世の者達はこの世界の歴史を語る度に告げることとなるのだろう。  この世界、『プセウド=エリューシオ』。  太陽の加護と自然の恩恵を受け、幾億もの人々が幸福に暮らしていたこの世界を、ある時、大きな災厄が襲った。  突如として空に出現した大きな黒色の孔(アナ)から、異形の生物が次々とこの世界に降臨し、周囲の街や人々を無差別に攻撃し始めたのだ。  後に『魔物』と呼称されることとなる、その異形の生物達は、人々が見たことも聞いたこともないような不思議な能力を用いて、あっという間に孔の近隣にあった都市や町村の全てを蹂躙し尽くした。そこに暮らしていた殆どの者が命を奪われ、残る僅かな生き残りの者達も、命以外の全てを失った。  魔物に支配された地域の上空には分厚い暗雲が垂れ込め、その一帯は文字通り、闇に閉ざされてしまった。  
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