第二章

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   しかし、そんな彼女の憂慮とは裏腹に、青年は思わぬ台詞を吐き出した。 「何だ、死んだのか。人間というのは、本当に脆い生き物だな」  やれやれといった口調でそう告げる城主の青年に、アイリスは無意識の内に腰に差した剣に手を伸ばそうとしたが、直後に思い直して手を下げ、青年に睨め付けるような視線を送る。 「それは……故人に対し、あまりにも無礼ではありませんか」  怒りに声が震える。それに気付いたのか、青年は僅かに驚いたような表情を覗かせた後、その口許をニィ、と歪めた。 「これは失礼した。しかし、他者の邸宅にノックも無しに入って来るような者から、他者への礼儀について説教を受けるとは思わなかったな」 「……ッ! 魔物の襲撃を受けて誰も居なくなったこの城を、貴方が勝手に占拠しているのでしょう。それを元より自分の邸宅であったかのように語るとは、流石は魔王の名を冠するだけのことはありますね」  皮肉に対して皮肉を返すアイリスに、青年は猶も愉しげな、且つ妖しげな笑みを浮かべる。  
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