第二章

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   小さく息を吐き、少女は床を蹴った。  一瞬にして魔王の座する椅子の背後へと移動。そして、全力の一閃にて椅子ごと魔王の身体を袈裟懸に斬り伏せる。  しかし、その完璧に計算された一撃は、呆気無く防がれてしまった。魔王によって、ではなく、彼の腰掛けている『椅子』によって……。 「ば……かな……」  剣を握る手が震える。その震動に合わせて、椅子と接する銀色の切っ先が、カタカタと耳障りな音を立てた。  魔王の座するそれは、一見すればただの椅子である。いや、よく見たとしても、その評価は変わらないだろう。  王城で扱われているものだけに、綺麗な装飾こそ施されてはいるものの、硬度の高い素材で作られているとは到底考えられない。  だが、アイリスの放った一閃は、その椅子を両断するどころか、傷の一つすらも与えることは出来なかった。  
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