第二章

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   いや、これは可笑しい。  眼前の光景に絶望しつつ、それでも猶、アイリスは冷静に状況を把握する。  アイリスの装備しているこの銀の剣は、『エリュシタイト』という特殊な鉱石を使用している。その名から想像の付く通り、エリュシオン帝国の近くの鉱山でのみ発掘される稀少な鉱石だ。  加工が難しい程に硬く、それでいて鉱物にしては軽い、その万能なる鉱石の塊を、十数人の法術鍛冶士が法術を用いて加工、鍛錬し、作製したのがこの細身の銀剣である。  高品質どころか超品質と言えるこの銀剣を振るえば、同質のエリュシタイト製の剣ですら木剣の如くあっさりと折れてしまうことだろう。  そんな超硬度の剣を振るって、傷の一つすらも付けられない椅子など、存在する筈が無い。いや、現に彼女の目の前に存在しているのだから、その断定は無意味だと言えるだろうが、しかし、たかが『椅子』にそこまでの性能を付与する意味があるのだろうか。  
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