第一章

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   偉大なる皇帝の治める国、『エリュシオン帝国』。闇に閉ざされた地域より、遥か遠く離れたこの地でさえも、何時しか魔物の驚異に晒されるようになっていた。  高い城壁に囲まれているエリュシオンの城郭は、未だ魔物の侵入を許したことはないが、城下には食料などを狙った魔物が度々侵入し、そこに暮らす住民達を悩ませている。  そんなエリュシオン帝国の、荘厳なる城郭の屋内で、今日、とある式典が行われていた。 「汝を『勇者』と認め、魔王討伐の任を与える」  立派な髭を生やした老練なる司祭が、両の手を掲げながら高々とそう告げる。彼の前に跪く、端正な顔立ちをした長い黒髪の少女は、目を閉じたままにこう答えた。 「法術剣士『アイリス・エリュシオン』は、確かにその任を承りました」  言い終えるが早いか、彼女の後方でその様子を見守っていた兵士達が、一斉に歓喜の雄叫びを上げた。  
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