第二章

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   法術に関しては、魔物の方が専門家である。最早言い逃れは不可能だろう。  これには流石のアイリスも黙り込む。しかし、その顔には、先程と同じく驚愕の表情が貼り付いていた。  数秒の間、目を見開いたままに思考を巡らせた彼女は、青年の顔を窺いながらも言葉を紡ぐ。 「貴殿方は、魔物……なのですね」 「……? 当然だろう。貴様も先程、我を魔王と呼称したではないか。魔王とは、魔物の王の略称なのだろう?」 「いえ、まあ、確かにそれはそうなのですが、どうも貴殿方は魔物には見えないと言いますか……」  アイリスの言葉に、青年は納得したようにその頭を頷かせた。 「ふむ。まあ、人の形を取る魔物など、そうはいないだろうからな。大抵の魔物は強さに執着し、異形の姿を取るものだ。そんな見掛け倒しの奴らを差し置いて、我のような弱者の姿を取る者が魔王と呼ばれるなど、皮肉なものだな」  遠回しに再び人間を弱者と見下すような発言をする魔王に、アイリスはむっとした表情を滲ませる。  
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