第二章

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  「そんな見掛け倒しの野蛮な魔物達も統率出来ない者を魔王と呼称するなど、『孤高の法術士』と呼ばれたラダムント様は、どうやら見る目のない御方だったようですね」  精一杯の皮肉だ。しかし、その青年が感情を乱す筈も無く、彼はただクスクスと愉しげな笑い声を溢しながら、再び納得したかのような仕種を見せる。 「成る程成る程。それでは、人間の王はさぞ有能なのだろうな。常に全ての人間の行動を監視し、悪事を働く者には王自らが鉄槌を下す、という訳だ。その調子で、他者の邸宅に無断で侵入する愚かな同胞のことも取り締まってはくれないだろうか」  やれやれ、とでも言うように、わざと困ったような表情を浮かべながらもそう告げる青年に、アイリスは今にも掴み掛かりそうな憤怒の形相を浮かべ、拳を強く握った。  皮肉に対して皮肉を返され、激昂する。あまりにも単純なる少女のその様は、『勇者』というよりはまさに年相応の少女であった。  
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