第二章

16/20
前へ
/568ページ
次へ
  「私達は生き残るために動物を育てているのです。それは悪いことですか?」 「悪だとは言っていないさ。生きようとすることはこの世に生を受けたものの本能であり、それは自然の摂理だ。そして、弱きものが強きものに淘汰されるのもまた、自然の摂理と言える」 「つまり、農家の方々が大切に育てた家畜を貴殿方が襲い、奪い去るのも、自然の摂理と言いたいのですか」  不満げに問うアイリスに、青年がけらけらと馬鹿にしたような笑い声を溢す。 「我が勝手に住んでいるこの城を我のものだと言うことは糾弾する癖に、農家の者が何処かから勝手に連れて来た哀れな動物達は、その子々孫々までもが自分達のものだと言い張るのか。本当に傲慢だな、貴様は」 「……ッ!」  怒りの余り、自らの腰へと手を伸ばすアイリス。しかし当然の如く、彼女の手は空を掴む。  砕け散っても猶、足許でキラキラと輝く剣だったものを見下ろし、彼女は悔しそうに奥歯を噛み締めた。  
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加