第二章

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   その様子を見つめ、魔王たる青年ははぁ、と大きな溜め息を吐くと、使用人の女性の方へと視線を向ける。彼女は一瞬だけ青年と視線を交錯させた後、無言のままにぺこりと頭を下げ、先程青年が蹴り飛ばした椅子を元の位置へと戻した。  青年はその椅子の上に座り、足を組む。 「食用の動物を狩るのではなく、自ら管理することで、安定した食料を確保する。実に人間らしい、賢しき案だと言えるが、しかし、命に対する敬意は微塵も感じられんな」 「人や動物を虐殺している貴殿方に言われたくはないです。それに、命に対する敬意と言うなら、私達は一部の動物に対しては深い愛情を注ぎ、共生しています」 「共生……?」  ふむ、と口許に手を当て、魔王は考え込むような仕種を見せる。  彼が初めて見せるその様子を、舌戦を制する好機と見たアイリスは、間髪を入れずに続けた。  
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