第二章

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   困惑する主を見兼ねたのだろう。使用人の女性は小さな溜め息を吐き出すと、そっと青年の座する椅子の後ろに立ち、言葉を溢す。 「一部の人間は、愛玩を目的として動物を使役しております。我々で言うところの、『使い魔』の様なものと御考え下さい」 「使い魔は、力を与えた使役者の命に従って様々な恩恵を授けるだろう。力無き小動物を使役する人間に、一体何の利があると言うのだ」  最後に理解出来ぬ、と付け足して、青年が首を横に振る。そんな主に、使用人は少しだけ考えるような仕種を見せた後、更に言葉を続けた。 「人間は、愛玩動物に対して食事と安全なる寝床を与えます。その代わり、動物はその愛らしき仕種で飼い主たる人間を癒すのでしょう。利害の一致、ということで御座いますね」 「私達の家族愛をそんな心無い言葉で片付けられると、流石に少し傷付くのだけれど……」  不満げにそう溢すアイリスに、使用人の女性は小さな声で「すみません」と告げながら、深々と頭を下げた。  
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