第三章

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   そんな彼女を前に、青年は一瞬だけ驚いたような顔を見せた後、ふぅ、と小さな溜め息を吐き、何処かつまらなそうに言う。 「それは知っている。しかし、敵わなかったろう?」 「私は、まだ……負けてなんかいないわ!」  絞り出すようにそう告げて、少女はぼそぼそと何かを呟き始めた。  椅子に座する青年は、それが高位の法術を発動する際に必要な詠唱だと気付いたが、敢えて手出しをせず、ただ言葉だけを投げ掛ける。 「それを受けても猶、我が五体満足で動けるようなら、貴様は我の愛玩動物となることを了承するか?」 「……! 何処までも私を馬鹿にして……。誰がお前のペットになど!」  その言葉に、青年は再び小さな溜め息を吐き出すと、一度だけ目を瞑り、精神を集中する。その直後、何かが弾けるような音が、室内に響き渡った。  
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