第三章

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  「我が肉体に付与されている『絶対』の能力を解除した。今の我は、人間と同質の肉体の上に、この何の法術的な耐性も無い粗末なる装束と、自らの内より溢れる法力を纏わせただけの軟弱なる存在である」  暗に、「そんな『脆き魔王』をも倒せないのなら、我が愛玩動物となれ」と言っている。そう確信したアイリスは、奥の歯をギリリと噛み締めつつ、その掌を前方へと差し出す。  恐らくは、凝縮した法力を撃ち出して前方にある全てを破壊する法術だろう。その証拠に、彼女が差し出したその掌の周囲には、圧縮された法力の光の粒が漂っている。  全てを破壊する法術。凡そ勇者が行使するに相応しいとは言えぬ力である。  しかし、彼女はその矜持に掛けて、今、その法術によって魔王を打倒し、勇者としての使命を果たそうとしていた。  その様子を真っ直ぐに見据え、魔王たる青年はぶつぶつと言葉を溢す。  
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